2015年1月31日土曜日

“木の香り”・フィトンチッド(2)

“木の香り”は一般的には、スギ・ヒノキなどに代表される針葉樹の香りです。ナラやメープルのような広葉樹にはほとんど香りがありません。このように“木の香り”は樹種の違いによりその強さが異なるため、持続時間も一定していません。針葉樹をふんだんに使用した住宅は築5年以上経過しても“木の香り”が持続していると言われています。

「フィトンチッド」も良い効能ばかりでは有りません。樹木(植物)たちは自身を守るため、フィトンチッドの働きを使って、生存を脅かす様々な危険から守っています。中には当然「人体に有害なもの」も含まれています。

人体に有害なものとしては良く知られているのは「毒キノコ」です。その他にも有害植物は他にもたくさんあります、トリカブトやドクゼリ、馬酔木(アセビ)などが有名です。また、ウルシの樹液も湿疹やかぶれを起こします。しかし、この有毒成分を「薬」としても用いてきたのも事実です。有害成分は致死量を超えてしまうと危険ですが、有用範囲内であれば薬理作用があり有効となります。

また、「フィトンチッド」は植物から『精油』を抽出する形で活発に利用されています。アロマテラピーなどで精油を用いる場合、その特性を良く理解しないと危険な事も多々あります。例えば「ユーカリ」や「ローズマリー」には強い刺激性と強力な作用があるため、妊娠中や高血圧の人は使用しない方が安全と言われています。


“木の香り”のもと「フィトンチッド」。様々な性質を持ち樹木自身を守っていることが良く分かります。住宅などでの“木の香り”も、これらの事を知って味わうとまた違った感覚をもたらしてくれます。



2015年1月30日金曜日

“木の香り”・フィトンチッド(1)

森林浴効果は前から知られています、緑にあふれた森林では心身の隅々まで行きわたるような爽やかな空気が広がり、“木の匂い・香り”が、心と頭をすっきりとリフレッシュさせてくれます。
“木の香り”いい匂いです、では木の香りとは何でしょうか?この正体が「フィトンチッド」と呼ばれる、主に樹木が自分で作りだして発散する揮発性物資で、その主な成分はテルペンと呼ばれる有機化合物です。

では、なぜ樹木が「フィトンチッド」を作りだすのでしょうか? それはまず樹木自身を
守るためです。

樹木が光合成を行うことは知られています、樹木が生きていくため、太陽の光エネルギーを利用して、炭酸ガスと水と炭水化物を作り、酸素を放出します。さらに二次的に「フィトンチッド」などの成分を作りだします。
「フィトンチッド」は樹木自身を防御する、様ざまな働きをします。他の植物への成長阻害作用、昆虫や動物に葉や幹を食べられないための摂食阻害作用、昆虫や微生物を忌避、誘因したり、病原菌に感染しないように殺虫、殺菌をおこなったりと、実に多機能な効果をもたらします。

このような事から、「フィトンチッド」には、身体をリフレッシュさせる効果だけでなく、抗菌、防虫、消臭などの様々な効能がある事が知られています。
 ・リフレッシュ:自律神経の安定に効果的で、肝機能を改善したり快適な睡眠効果をも
たらします。
 ・消臭、脱臭 :森林に行くと朽ちた木や小動物などの腐敗を目にすることがあります
が、周囲には爽やかな空気が広がります。空気を浄化したり悪臭を消
す動きがあります。
 ・抗菌、防虫 :抗菌作用は人体を蝕む病原菌にも有効です、人体に安全な天然物資ですから副作用の心配がなく穏やかに作用します。


この「フィトンチッド」は樹種の違い、含有量などによって大きく異なります、成分によっては特定の樹木にしか含まれないものもあり、その量や種類が樹種の個性を生み出しています。


2015年1月27日火曜日

PM2.5とぜん息発作・黄砂と緊急搬送

兵庫医科大の島正之主任教授は、大気中の微小粒子状物質「PM2.5」に含まれている特定の物資が、ぜん息の発作と関連していることを突き止めたと発表しました。20088月から20133月にかけて姫路市内でPM2.5の濃度や含まれる成分と、ぜん息発作の関連を調査。

その結果、石炭や石油の燃焼で排出される「硫酸イオン」がぜん息の発作と関連があることが判明したとのことです。

大気1㎥当りのPM2.5濃度が環境基準値の1日平均3.5μg(マイクログラム)を、週1日超えただけで、ぜん息発作の率が全年齢で7%、014歳児では13%増加、さらに成分を分析したところ、硫酸イオンが含まれていた場合は発作の率が10%高くなるという結果が出ました。
子どもは身体が小さいうえ、屋外にいる時間が比較的長いことからなど、大気汚染の影響を受けやすいと言われています。また、硫酸イオんは国内での排出に加え、石炭利用の多い中国などから飛来している可能性も考えれてます。

島教授は今回の調査を踏まえ「硫酸イオンとぜん息の関連は判明したが、個人の努力で影響を避けるのは困難。大人や社会が責任を持ち、国を超えて大気汚染防止対策を強化すべきだ」と指摘しています。

昨年には国立環境研究所の上田佳代主任研究員らが、中国大陸から飛来する黄砂の濃度が高い日は緊急搬送の数が増えるとの研究結果を発表しています。
緊急搬送のデータが充実している長崎市を調査。けがや妊婦を除き2003年から2009年の35月の成人の搬送数約9千件を分析したところ、黄砂濃度が高い日は黄砂がない日に比べ搬送数は12%多く、心臓病と脳卒中の循環器疾患に限ると21%も増えたとのことです。
上田主任研究員は「黄砂と共に飛んでくる大気汚染物質が影響している可能性がある」としています。

また、黄砂を含む大気の飛来ルートを解析したところ、大陸沿岸の工業地帯を2キロ未満の高度で通ってきた日の方が、上空を通ってきた日より搬送数が多い傾向があり、福岡県内の病院に入院した脳梗塞の患者を対象とした調査では、特定タイプの脳梗塞は発症が30%増えたとの結果も報告されています。

いずれにしても、PM2.5の飛来が大きく報道されるようになり数年が経過しましたが、発生源と言われる、中国での規制は大きくは進んでいないようです。
日本では高性能フィルターの開発・商品化など「防御システム」はかなり進みましたが、根本の発生源の抑制が滞り、抜本的な解決への道筋はまだ見えていません。


これからの時期ますます黄砂などの飛来が多くなります、外出時のPM2.5対応マスクの着用や、帰宅時の衣服へのケア、そして室内への外気の取り込みなど注意が必要です。また、換気を控えた時など、室内空気環境改善にも取り組みましょう。



2015年1月22日木曜日

今年の花粉は?(2) 今年は多い!

花粉症は、花粉を多く吸い込むと、花粉に対する抗体(IgE抗体)が産生され、これが一定量に達するとアレルギー症状を引き起こすと考えられています。
また、環境省では花粉症の悪化要因の可能性として、空気中の汚染物質やストレスの影響、食生活など生活習慣の欧米化による影響も指摘しています。

花粉の飛散シーズンは概ね4月一杯ですが、黄砂とPM2.56月ころまで続くと言われています。大気の汚染により喘息の悪化など呼吸器系の病気や循環器系の病気や、発がん性物質の影響によるガンの恐れも言われています。

花粉を避ける方法として、外出の際、マスクやメガネを着用し帽子をかぶるなど花粉が目や鼻につかないよう注意することが大切です。
マスクの効果として、「鼻内花粉数」を調べたデータがあります。
・マスクも通常のマスクより花粉症用マスクの方がより効果が高いことがわかります。
  マスクなし     鼻内花粉数 1,848
  通常のマスクなし    〃    537
  花粉症用マスク     〃    304

・普通のメガネでも、使用しない時に比べ眼に入る花粉数を減らすことができます。
  メガネなし     付着花粉数  29
  通常のメガネ      〃    9.8
  防護カバー付メガネ   〃    1.8

また、花粉症の新しい治療法として【舌下免疫療法(舌の下にスギ花粉の液を滴下してスギ花粉症を治す)】が期待されています。H2610月に舌下免疫療法治療薬が発売されました、この療法は,皮下注射法に比べて通院回数が少なく、苦痛の少ない有効な治療法とされています。


PM2.5、花粉、黄砂と外気は必ずしも安全ではありません。住宅などの換気に外気を取り込むため十分な配慮が必要です。このため換気を控えた場合など、室内を<きれいな空気環境>に保つことが重要となります。高性能フィルターの空気清浄器や、室内の化学物質を効果的に分解除去するReN資材の活用をお勧め致します。



2015年1月21日水曜日

今年の花粉は?(1) 今年は多い!

日本気象協会は114日「2015年春の花粉飛散予測(第3報)」を発表しました。

全国予測では、2月上旬から花粉シーズンがスタートするとし、「スギ花粉の飛散開始は例年並みか早い」と予測しています。2月から3月にかけ西日本と東日本では気温が例年並みか高めと予測され、スギ花粉の飛散開始は西日本と東日本では例年より早いとしています。
九州では25日頃、近畿・東海では210日頃、関東では210日から15日頃と見られています。
               
全国的なスギ花粉のピーク予測では例年並みの3月、福岡では2月下旬から3月上旬、高松・広島・大阪・名古屋・東京は3月上旬から中旬の見込みで、金沢・仙台では3月中旬から下旬と見られています。スギ花粉が終わったころヒノキ花粉がピークを迎えます。

スギ・ヒノキ花粉(北海道ではシラカバ)の各地飛散総数は、九州から近畿地方のほとんどの地域は例年よりやや少なく、東海から東北は例年並みと見られています。しかし、2014年に花粉の飛散数が少なかった北陸・関東甲信・東北地方では2014年の23倍になるとしています。

花粉の飛散数は前年夏の気象条件が大きく影響し、一般に気温が高く、日照時間が多く、雨の少ない夏は花芽が多く形成され、翌春の花粉の飛散数は多くなります。東北・関東甲信・北陸ではこの条件にあてはまり、今年の飛散総数は多くなるとの予測です。

東京都では10年毎に「花粉症患者実態調査」を行っており、第3回(H18年度)調査報告
が公表されています。

スギ花粉症患者が第1回調査時(S58年度~62年度)では都民の10人に1人(10.0%)でしたが、第2回調査(H8年度)では、5人に1人(19.4%)となっており、10年間でスギ花粉症有病率が約2倍になり、第3回調査(H18年度)では約3.5人に1人(28.2%)までに増加しています。



2015年1月9日金曜日

室内の新たな汚染物質(2)

室内において従来対象となっていた浮遊粉じん濃度は、建築物衛生法により測定されている粒子として、粒径10μmが対象となってきました。
室内におけるPM2.5を含む微粒子の発生源については、大気の侵入に加え、大気と同様に室内での燃焼物によっても発生し、一次発生源としては、調理、ローソク、アロマ、へアスプレー、ドライヤー、タバコ煙、ガスストーブなどがあり、コピー機やレーザープリンタなどの情報機器からの超微粒子の発生も注目されています。レーザープリンタのトナーは粒径6μm程度ですが、粒径30nm程度の超微粒子が測定されたとのことです。

テルペン(天然有機化合物)類の発生源としては、建築材料として使用されている木材からの発生も考えられていますが、家庭用品とし消臭剤に含まれる成分も想定されています。
オゾンについては、外気からの侵入、脱臭機でオゾンを発生するものの他、空気清浄機の一部でオゾンが発生するものもあります。

室内微粒子と健康影響については、まだ数が少なく、超微粒子と小児ぜんそくの関係を調べていますがまだ不明な点が多いとしています。

ハウスダストは一般的にダニの中体及びフンなどのアレルゲンを中心にペット・カビなどのアレルゲンを指すことが多く室内の床表面な疎に堆積した粒子です。一方、室内環境中には、プラスチックの添加剤として用いられる可塑剤や難燃性可塑剤など、多くのSVOC(準揮発性有機化合物)が使用された製品が存在しています。ハウスダストから種々のSOVCが検出されており、ハウスダストの巻き上げにより呼吸器に侵入する可能性、ダストに手で接触することで経口摂取する可能性が高く、小児ぜんそくとの発症に相当な関係があるとしています。

室内空気汚染物質としては、ガス状物質と粒子状物質に分けられ、ガス状物質は外気との換気、粒子状物質は換気と共に空気清浄器などのエアフィルターによる除去が主となります。

いずれにしても適正な換気や結露などを防ぎ、常に室内の空気環境を【きれいな空気】の状態に保つ事が大切な事です。


2015年1月8日木曜日

室内の新たな汚染物質(1)

「国立保健医療科学院」から【保険医療科学】が発信されています。2014 Vol.63に「室内空気環境における新たな汚染物質」の論文が掲載されています。

室内汚染物質の揮発性有機化合物(VOC)は、13種類が指針値が定められその使用について規制されています。

この論文では今後の注目する室内汚染として、浮遊微生物やそれに関連して微生物から発生する微生物由来揮発性有機化合物(MVOC)、微粒子、ハウスダストをあげています。

また微粒子の室内の発生源については、燃焼によるもののほかに化学物質の二次生成やレーザープリンタからの超微粒子の発生などにふれ、ハウスダストの問題ではハウスダストに吸着する準揮発性有機化合物(SVOC)と健康影響、ハウスダスト中に含有するSVOCの濃度の現状と、今後のデータの蓄積によりSOVCと小児ぜんそくとの因果関係の解明に期待しています。

建物も省エネの観点から気密性が向上して、自然換気が期待できず、24時間換気システムも適正に作動されていないケースもあり、室内の空気質の悪化(濃度の上昇)の要因にもなっていると指摘しています。

建築環境の分野において「ダンプ」という言葉がよく使われますが、これは<湿気・湿った、ジメジメした>などの状態をさし、建築内部の結露などによる環境の悪化をしめしています。ダンプはシックハウス症候群の重要な要素の一つといわれています。

ダンプにより微生物(カビなど)が発生し、その微生物から発生するMVOC(微生物由来揮発性有機化合物)はアルコール類、ケトン類、ホルムアルデヒド類、酸類、テルペン類などがあげられています。

スェーデンの小学校児童を対象に調査した結果、室内のMVOCが高いとき、夜間の息切れやぜんそくが多く見られ、MVOCが子どものぜんそく症状の危険因子となる可能性が指摘されています。

続きは明日掲載します。


2015年1月7日水曜日

親の禁煙でぜんそく入院2割減

こんな見出しの記事が1月7日の朝日新聞の朝刊に掲載されました。大阪府立大成人病センターの田淵医師の研究グループの調査研究内容です。
親が禁煙すれば子供の喘息の重症化を防げ、4歳半から8歳の間にぜんそくで入院する子を少なくとも2割近く減らせるとのことです。

この調査は厚生労働者の大規模追跡調査に参加した2001年生まれの子ども43千人を対象とした調査で、喫煙以外の要因を除いた上で、両親が室内で吸う子がぜんそくで入院する確率は、両親がたばこを吸わない子に比べて①生後半年~2歳半で1.54倍②2歳半~4歳半で1.43倍③4歳半~8歳で1.72倍になりました。

調査結果を日本全体に当てはめると、両親とも禁煙すれば、少なくとも①の年齢層で8.3%(4970人)②で9.3%(4950人)③で18.2%(1940人)の入院を減らせるとしています。田淵医師は「子どものぜんそくの818%は親の喫煙が原因と言える」と話しています。

親の喫煙は子どもに対し、受動喫煙や三次喫煙の悪影響を与える事は前から言われていましたが、「禁煙の予防効果」を具体的に示したのは今回調査が初めてとのこと。

また、昨年には英医学誌ランセットで<公共の場や職場での喫煙を規制したことにより、早産や小児ぜんそく発作の救急治療の割合が1割以上減ったという調査結果も出ています。
この調査は、米国・カナダ・欧州4か国を対象に、地方自治体または国レベルでの喫煙規制の効果に関する11の公的調査から、200万人以上の子どもの記録を精査しまとめられたものです。それによると、喫煙規制が始まってから1年以内に、早産と小児ぜんそくの病院治療の割合が、10分の1以上減ったそうです。


いずれにしても「喫煙」が周囲に及ぼす影響は大きなものがあります。日本では禁煙エリアや分煙への取組はかなり進んできましたが、まだ十分とは言えません。家庭内はその家人の自主判断に委ねられています。特に将来ある子供への影響を最小限に抑えるため、喫煙者は一歩踏み込んだ行為が必要と考えます。