2014年3月11日火曜日

全建総連による【住宅新築・リフォーム実態調査】

全国建設労働組合連合(全建総連:2012年6月末62万人加入)から、2013年3月
に表記の調査報告が発表されています。この調査は、2012年度の1年間に同組合
員の「大工(建築大工)」職14万6千人に23の設問を行い、51県連・組合から59
59名の回答が得られています。

【調査要旨】
1.建築大工の年齢:60歳以上が約半数(49%)を占め、50歳以上では約8割
(77%)と、超高齢化の状況です。若年層の参入が現状のまま10年推移すると、
50歳以上が9割(92%)となります。超高齢化の兆しが顕著です。

2.事業所の組織形態:個人事業所が68%、有限会社が21%、株式会社が11%。
組織化された会社が少なく、全体に脆弱な体質と言えます。

3.従業員数(経営者、職人、事務含む。常用):いわゆる一人親方が42%で、
3名以下で約80%を占めています。中小企業景況調査によると、建設業において
は、震災以前から従業員不足が生じており、後継者不足と合わせ、従来の徒弟
制度に代わる人材育成の仕組みが必要としています。例えば「多能工」の考え
方も普及始めており、業界全体としての取り組みが急務です。

4.後継者の有無:後継者なし64%、有り36%で、後継者不足が顕著で深刻な課
題です。2012年の帝国データバンクの調査によると後継者の不在率は全業種の
平均で65.9%となっており、建設業では69.6%で、サービス業に次いで2番目と
なっています。また、技術者の確保が困難な状況になりつつある現状では、技
術職の廃業は技能継承の断絶であり、業界低迷の要因となり得ると警鐘を鳴ら
しています。

5.新築住宅: <構造>では在来構法が88%を占めます。年間の戸数では平均
0.98戸(一人親方では平均0.36戸)です。全建総連組合員で、年10戸を超える
受注がある大工・工務店は1%に満たず、多くの大工・工務店が脆弱な経営環境
にあると推測されます。
<元請合計金額>の平均は1,832万円/年・1,878万円/年・戸で、一人親方の平
均640万円/年 1,767万円/年・戸です。
<下請件数>:69%が下請形態なしとしています。

6.住宅リフォーム:平均 4.9件/年(一人親方の平均 3.38件/年)で、同組
合員の8割がリフォーム元請工事を行っており、新築工事の約5倍の工事件数と
なっています。工事金額は平均 886万円/年で、500万円以下は32%とリフォー
ム金額の小ささが目立ちます。リフォーム下請58%が経験なしとし、少額のリ
フォームは直接受注の面が窺えます。

7.住宅履歴情報については64%が知らないと回答しており、国が進める施策の
普及とのギャップがあり、もっと啓蒙する必要があります。

9. 新築・リフォームにおける公的助成金制度の活用の有無も50%がある。50%
がないとし、同じくもっと啓蒙しなくてはなりません。

10.現場における一定の技術を持った技能者が不足については、63%が感じて
おり、ほとんどの地域でほぼ6割以上が技能者不足を感じています。国土交通
省によると、建設業への入職者数はH4年(1992年)の約半分に減少し、建設業
全体の収入も下降している。技術競争力の低下(技術・技能の継承が不適)と
ともに、技術力低下が進み、魅力が減り入職率が低下するという悪循環が生じ
ています。いかに若手労働者を建設業へ振り向かせるか官民一体となっての取
り組みが必要であり、急がれます。

11.どのようなテーマに興味があるかについては、1位:自然素材14%、2位:
耐震13%、3位:伝統構法12%となっており、耐震や太陽光発電などや直接防
災に関連するテーマへの興味は高いが、省エネや長期優良住宅に関する関心は
それほど高くありませんでした。しかし、国の施策は間違いなく、省エネや長
期優良住宅制度を強力に進めており、この分野への関心の極めて大切です。

*1全建総連組合員の2012年における新築着工戸数は推定約8.6万戸。推計シェ
ア20.3%で大手ハウスメーカーの10社の戸数とほぼ同数にあたります。また、
 全建総連組合員の同年におけるリフォーム工事受注額は推定6,006億円で、国
の全国推定工事高3兆760億円に対し、推定シェア19.6%となり高いシェアを持
ちます。

今回調査ではいままで余り各種統計に現れなかった、直接現場に携わる「大工
(建築大工)」職の調査であり、その実態がかなり明らかになりました。大工
職の高齢化に伴う継承者不足は深刻です。2020年には現在の50万人から30万人
へと4割減が言われております。その対策をどうするか一日も遅れる事はでき
ません。


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